踊り子の憂慮 其の弐

会議中かな。

って、寝込んでるかと思ってたのに、元気じゃない。

心配そうに見てる。

ポーシャ ……あ、あなたは……
りぃ こんにちは。

そして流れるように中へ。

ラジュリーズ ……よう。コブラ傭兵団の、りぃ、だったな。久しぶりじゃねえか。どうした?
りぃ 元気かな、と思って。

会議中に勝手に入ってきたのに怒らないんかい。

ポーシャ ……。

解散させた。

ラジュリーズ ひょっとしてオレの体を心配してくれたのかい?あの、奴らから受けた呪痕……。

ラジュリーズ ふふ、有難えが、杞憂ってもんだ。なめてもらっちゃ困る。仮にも鉄鷹騎士団を率いる身、そう易々と……

あらっ、めまい?

ラジュリーズ ぐっ……

ええー!?

ポーシャ ラジュリーズさま!

ラジュリーズ ……大丈夫だ。心配ない。
ポーシャ でもっ……

全然大丈夫じゃないでしょうよ!

ラジュリーズ ……りぃ、頼みがある。この傷のことは、秘密にしてくれ。一切、他言無用だ。
りぃ いや、でも…。

ラジュリーズ 今が大事な時期なんだ。鉄鷹騎士団はラテーヌ会戦で半壊したが、オレがやっと立て直した。ようやく、皆に、この戦いを、勝ち抜く自信が芽生えたところだ。

ラジュリーズ 上にいるオレが倒れちゃ、何もかも台無しよ……。頼む……。

りぃ ……わかった。
ラジュリーズ 恩に着るぜ……。それでこそ、オレがダチと見込んだ女だ。

ラジュリーズ じゃあな。これから軍議があるから、失敬するぜ。

ポーシャ ラジュリーズさま……

ポーシャ ……ずっと、あんなふうなの。本当は、すごく体がお悪いの……。日増しに、少しずつ、弱っていかれるのがわかるわ。でも、鉄鷹の皆さんの前ではずっと気丈にふるまっていらっしゃって……

ポーシャ わたし……心配で心配で……

ああ、目に涙が…。

ポーシャ このまま、あの呪痕がひどくなってしまったら……ラジュリーズさまが倒れて……いなくなって……しまわれたら……わたし、どうしよう……

何と言ったらいいか分からないけど、はげますしかない。

りぃ 大丈夫。なんとかなるよ。

少なくともリリゼットが生まれて父親の記憶が残るくらい大きくなるまでは生きてるわけだし。

ポーシャ ……ありがとう。りぃさん、優しいのね。

ポーシャ ふふ、リリゼットが懐いてるのもわかる気がするわ。

懐かれてるの!?

ポーシャ あんなふうに気が強くて月影の狼なんて呼ばれてるけど、本当は優しくて、さみしがり屋の女の子だもの。

ポーシャ わたしにだけ、教えてくれたの。あの子、だいぶ前に、御両親を亡くしてからずっと独りぼっちだったんですって……。

ラジュリーズは呪いのせいだとして、ポーシャはどうしてだろう。
って前も言ったような気が。

ポーシャ どうか、リリゼットの力になってあげてくださいね。りぃさん。
りぃ うん。

ポーシャ わたし、あなたたちを見てたらなんだか、とってもほのぼのした気分になったの。どうしてかしらね?

ほのぼの?
リリゼットは分かるけど、どうして私込みなんだろう。

ポーシャ え?そのリリゼットはどこにいるのかって?

ポーシャ それが……なんだか、ネコ?を捕まえるとかで舞踏団のみんなを連れて出かけちゃったのよ。ジャグナー森林に行くって言っていたけど、どうしてるかしら……?

敵の本拠地の近くまで気軽に行くとか、危ないなぁ。